[インドネシア視察レポート・中編]能代山本地域における「地域の人事部」が現地の送り出し機関を視察いたしました
能代山本地域における「地域の人事部」が実施したインドネシア視察の概要についてご報告いたしました「前編」に続き、本記事では日本で就業希望する皆様への教育と送り出しを行う2つの機関を訪問した際の様子をお伝えいたします。
前編はこちら
PT.MINORI(MINORIグループ)
組織概要
PT.MINORIは2008年に設立され、人づくり事業を通じて日本とインドネシアをつなぐことを目標としています。同社はインドネシアでも有数の事業規模を誇る人材育成機関およびグループ企業であり、これまでに10,000人以上の技能実習生を日本に送り出した実績があります。さらに、送り出し以前・以降の質の高い教育とサポート、幅広い事業内容が高く評価されています。
盛大に歓迎していただきました
視察参加者、MINORI社にて
特徴
MINORIグループは、日本語学校、職種や分野ごとに特化した技能実習および特定技能人材の育成、短期大学の運営、日本国内における登録支援機関の経営など、外国人材に関連する教育・送り出し・雇用・支援の包括的な事業を展開しています。特定技能「自動車運送業」の追加に伴い、社屋および学生寮が新設された敷地内に、日本基準のマナー・知識・技能を兼ね備えた運転手の育成を目的とするドライビングスクールを建設するなど、日本国内の外国人雇用の動向に迅速かつ柔軟に対応しています。
また、同社では生徒の皆さんが日本国内の受け入れ企業と面接を行い、内定が決まった後に日本語教育を開始する方式を採用しています。具体的な地域・業務内容・企業特性を事前に共有することで、ミスマッチを防止する体制を整えています。
半年以内にJLPT(日本語能力試験)N4レベルまで日本語力を高める教育カリキュラムは、主体的な推察力を重視したものとなっており、文法や単語の暗記に偏らない実用的な日本語能力の習得を目指しています。
さらに、自社開発の教育アプリ「MINORI Edu」を活用したペーパーレス授業を提供しており、N4取得までは対面形式、N3対策はオンラインと対面のハイブリッド形式、日本入国後はオンラインで継続的な自主学習が可能な仕組みを整備しています。このアプリは、試験結果の分析や誤答傾向の把握を通じた授業内容の改善にも活用されています。
グループ企業であるNAGOMIやDMIでは、それぞれ対応する職種の技能訓練を行い、即戦力となる人材育成にも注力しています。また、金銭管理、生活指導、キャリア教育・支援といった分野にも力を入れ、生徒を自立した人材として育成する明確なビジョンを基盤に活動を展開しているの、同社の特徴です。
視察のハイライト
実際に日本語授業が行われている教室へお邪魔させていただき、見学をいたしました。それぞれの教室には日本の都道府県名が付けられており、10数名ほどの生徒の皆さんが熱心に学んでいました。視察参加者から「好きな食べ物は何ですか?」「日本に行ったら何をしたいですか?」と質問があると、皆さんとても大きな声で明るく元気に答えいただき、日本で働くことに対して希望に満ちている印象を受けました。
授業風景
学生寮の見学も行いました。寮では生徒の皆さんが自主的に炊事を行い、規律を守った共同生活を送っているとのご説明があり、一部屋に複数人が寝泊まりする環境の中で、自律性と生活力を養っていることが伺えました。また、日本での生活を想定し、ゴミを種類別に仕分ける日本式のルールを取り入れるなど、寮生活そのものが学びの場になっている点が伺えました。
学生寮一階、キッチンの写真
ゴミの分別
オンラインカジノの危険性について啓発する掲示物
日本企業から内定を得ている生徒との模擬面接も実施しました。生徒の皆さんは、「日本のどこで、どんな職種で働くのか」「日本でどんな生活を送りたいか」「なぜ日本で働きたいのか」といった質問に的確に答えており、短期間で日本語能力とコミュニケーション力を向上させる教育の質の高さを実感しました。
模擬面接の様子
最後に、元技能実習生の皆様とのランチ交流会にも参加いたしました。皆様非常に流暢な日本語を話されており、当時の職場の様子や休日の過ごし方、恋愛観など、様々なトピックについて和気あいあいと語り合うことができ、とても賑やかな時間となりました。MINORI社が提供する日本語教育の高い質とキャリア支援の成果が、ここでも強く感じられました。
ランチ交流会について、元実習生のみなさんといただいた食事
得られた知見
MINORI社は非常に優れた日本語教育や技能教育に加え、生徒と受け入れ企業の双方にとって安心できる手厚いサポート体制を実現していることを実感いたしました。特に外国人雇用のノウハウが少ない秋田県および能代山本地域にとって、同社は人材確保だけでなく人材定着という観点から力強いパートナーとなる貴重な存在であると感じました。
LPK HADETAMA
組織概要
LPK HADETAMAは2019年に設立され、2020年にインドネシア労働省から正式な許可を取得した送り出し機関です。2024年時点で300名以上の送り出し実績を持ち、技能実習生、特定技能、技術・人文知識・国際業務の在留資格に対応しています。また、日本国内の専門学校や大学と提携し、人材の教育と適応を支援する体制を整えています。
HADETMAで学ぶ生徒の皆さんによるお出迎え
特徴
HADETAMA社の大きな特徴の一つは、日本語能力が要件ではない技能実習生についても、送り出し前に最低でもJLPT N4レベルを目指す日本語教育プログラムを提供している点です。インドネシア国内の提携大学や学校から生徒を募集しており、専門的な知識や経験を有する人材が豊富です。生徒の皆様は適性検査、面接、健康診断を経て選抜され、企業のニーズに合致した人材が送り出されています。
また、複数の採用パターン(以下の図をご参照ください)を備え、企業ごとの要望に柔軟に対応する体制を整えています。こうした包括的な選抜と教育プロセスにより、同社は受け入れ企業から高い評価を得ています。
視察のハイライト
HADETAMA社でも同様に、実際に日本語授業が行われている教室を見学させていただきました。日本語のシャドーイング練習や、テーマに基づいたディスカッション形式の意見発表に取り組む皆様の姿がとても印象的であり、同社ではこうした実践的な教育手法を通じて職場や生活で役立つコミュニケーションスキルの向上に焦点を当てていることが見受けられました。
皆さん、とても熱心に勉強されていました
視察参加者と生徒の皆様が同席する面接も実施され、生徒の皆様の履歴書を基に「なぜ日本で働きたいのか」「日本でどんな生活をしたいか」といった質疑応答を行いました。この対話を通じて、生徒の皆様の人柄や仕事に対する姿勢を理解したばかりでなく、日本で働くことへ対する高い熱量を感じることができました。更に、参加企業のうち、自らも土木工事現場に従事する女性担当者からの「建設業の土木分野を志望する女性と面接がしたい」という要望に急遽対応し、迅速に追加の面接を執り行っていただきましたことで、地域内企業にとっても非常に充実した機会となったと感じております。
土木業を志望する女性生徒の皆さんとの面接
また、この面談の実施により、能代で就業する生徒を育成するクラスの創設を検討していただき、加えて個社単位での二次面接を実施していただけることにも繋がりました。同社はこのように、企業の多様なニーズに応える高い柔軟性を有していることが明確となりました。
得られた知見
複数の採用パターンが用意されており、既にある程度の日本語能力を有した生徒の皆様と面接ができるという同社の強味は、外国人雇用を検討する地域内の企業にとっての安心材料であると言えます。また、私たちの取り組みに柔軟に協力していただけるHADETAMA社は、今後の能代山本地域にとって大きな推進力を与える存在であると認識いたしました。
この2社における視察により、視察団一行は心強いパートナーとなる皆様の存在と熱意に胸打たれ鼓舞されたのみならず、多文化共生社会の実現を通じて地域の新たな未来を創生するためのビジョンをより明確にすることができました。私たちをご歓待いただきましたMINORI様とHADETMA様、そして生徒の皆様には、心より御礼を申し上げます。
インドネシア視察報告レポートの最終回となる次の後編記事では、産業・工業分野における優れた人材を育成・輩出するASTRAtech様とPoliteknik Industri ATMI様を訪問した際の様子をご報告いたします。後編記事は近日中の公開を予定しておりますので、ぜひご期待ください。