株式会社あきた創生マネジメント:海外人材の雇用背景と効果:阿波野氏へインタビュー
株式会社あきた創生マネジメントのご紹介
事業概要
秋田県で介護事業、海外人材登録支援機関事業、海外人材インターンシップ事業を行っている。人口減少社会における介護経営のリデザインをテーマに、高齢化と人材不足という課題に対し、グローバル人材の受け入れと育成、そして持続可能な事業運営のための変革に取り組んでいる。
これまで介護職・ケアスタッフとして、インドネシアなどからの技能実習生、特定技能外国人を複数雇用している。
(公式サイト:https://rin-sousei.com/)
お話を伺った方
代表 阿波野 聖一 氏
海外人材を雇用しようと思った背景
Q:海外人材を雇用しようと思った背景を教えてください。
阿波野氏:雇用のきっかけは人手不足ですね。2015年あたりから中途採用、新卒採用含めて人材の採用が難しくなりました。
そこから、日本人スタッフの残業や休日出勤が当たり前のような状況が続いてしまいまして。そんな中で今後どうしていこうかと考えた時に、ちょうど2017年辺りから技能実習制度で介護の職種が始まり、そこから海外人材のことを勉強し始めて、いよいよ2019年に1期生が入社した、というのが背景となります。
海外人材を雇用するまでの過程
Q:一番最初に海外人材を雇用するときに、まずどういう取り組みをされましたか?
阿波野氏:以前は制度のことも全く知らなかったので、送り出し機関も含めて管理団体に全てお願いをしていました。ですが実際に現地へも見に行きましたよ。
Q:実際に見に行ってみて印象は変わりますか?
阿波野氏:見に行くとやはり印象が変わります。大事ですよね。事前にオンラインで会話して人柄や語学力を知ったことに加えて、実際に現地へ行ってみて確信したこともあって。それらが相まっての気持ちの変化が一番大きかったですね。
Q:具体的にはどういった心情の変化がありましたか?
阿波野氏:彼らは思っていた以上に真剣に日本語を勉強していました。真剣に勉強をしている姿を見ると感動してしまいますよね。これなら日本人側がもっと真剣に受け入れる姿勢を見せていかなければいけないと思いました。
海外人材を雇用してみて感じたこと、周囲の反応
Q:雇用するにあたって当初不安に感じていた部分はありましたか?
阿波野氏:不安しかありませんでした。海外人材に対しての不安よりも、受け入れる側の日本人スタッフに対しての不安の方がやはり私は強かったです。
具体的には、彼らが海外人材を受け入れてくれるのか。今までは海外人材と接する機会がほぼ無かったので海外人材に対して慣れていない。海外人材の不安よりも受け入れる事ができるか?という国内側の不安を強く感じていました。
Q:実際受け入れに向けて動いてみて、心象の変化はありましたか?
阿波野氏:受け入れるにしても来日までには準備含めて1年近くかかりますよね。
個人的にこの1年間がもったいないなと感じまして、どうせならオンラインで交流を進めていこうかと考えました。そうして彼らが来日する前から月に一度ほど、定期的に能代とインドネシアをオンラインで繋いで顔合わせと交流を行いました。
その場を通じて、彼らが既に日本語を高いレベルで習得していて、会話が可能なことは十分認識出来ましたし、その認識の上で具体的な準備を進められたので、受け入れ時には当初想定していたギャップや不安は払拭されていましたね。
Q:利用者から不安の声はありましたか?
阿波野氏:いえ、全くありませんでした。それこそインドネシアから来日された海外人材の方々がヒジャブを被っていますよね。これが畑作業の際に被るほっかぶりと似て見えるそうです。だから抵抗感はそれほどなかったみたいですよ。
Q:利用者の方の反応はポジティブだったんですね。
阿波野氏:ええ、海外人材の方たちは皆さんホスピタリティが高くて、笑顔が素敵なのが強みですね。実際、笑顔をよく見せてくれる方が利用者様からも慕われやすいです。なので日本人スタッフ以上によく姉さん、兄さんって呼ばれていましたよ。
Q:これまで雇用してきた海外人材への印象はいかがでしたか?
阿波野氏:インドネシアの方はイスラムの教えの中で生活しているので、規則正しい生活やルーティンもちゃんと守りますよね。なので安心感があります。
あとメンタルと身体面どちらも強いですね。彼らの強さは日本人とはまた違うなと感じます。
海外人材を雇用した効果
Q:海外人材を雇用して得た成果があれば教えてください。
阿波野氏:日本人スタッフの教えるスキルが格段に上がりました。
教えるにも時間がかかるので、教え方にも工夫が必要ということを理解するようになりました。やはり海外人材だからという部分で、教え方のパターンを色々作っていきました。
そしてこれは日本人の新人スタッフに対しても一緒だよね、とちゃんと気づくことが出来ました。教えるスキルがついたのは海外人材の方たちのお陰なのかなと感じていますね。
またマニュアルの見直しも行ったので、それが日本人スタッフに対しても同様に影響していると思います。
Q:他にも海外人材を雇用した効果や期待を超えて活躍したエピソードなどあればお話しいただきたいです。
阿波野氏:日本人よりも意欲が高いことがまず挙げられますね。
あとは日本人との比較だと、コロナ渦でもメンタルが安定してて、かつ健康だったことですね。やはり心身が安定していることは大事ですよね。あと彼らなりに休みと仕事のオンオフをしっかりつけていましたね。そんなに楽しみがなくても、自分で探して見つけて楽しめるんですよ。これがやはり日本人にないところだと思っていて。だからストレスをあまり感じさせない。そこも海外人材たちの強さだと思います。
Q:海外人材に対して当初の期待から外れたなと感じた瞬間はありましたか?
阿波野氏:期待を超えてくることはあっても、期待から外れることはなかったですね。
理由としては、正直私は即戦力としては期待を懸けていなかったので。業務に必要な能力があっても、それをすぐに習得出来るとは思ってなかったです。正直これは日本人の未経験者を採用するのと何も変わらないです。
今後海外人材を雇用する企業に向けてのアドバイス
Q:これから採用する企業に向けてのアドバイスをお願いします。
阿波野氏:コミュニケーションツールをどれだけ活用出来るかが重要な要素だと思っています。
うちは社内コミュニケーションツールとして、LINE WORKSを使っていますが、日本語で書いた文章がそのまま翻訳として出てくる翻訳機能を利用することによって、今までは50%しか理解出来なかったものが、70%くらいまで理解出来るようになればいいと思えると大分違ってくると思いますね。なのでそういうツールを利用したらいいと思います。
Q:他にも何かアドバイスや伝えたいことがあればお願いします。
阿波野氏:見てくれていれば分かりますけど、彼らはものすごく日本語を勉強していますよ。
就業を考えている海外人材へ能代地域のアピール
Q:日本で就業を考えている海外人材に、秋田県能代地域のアピールをお願いします。
阿波野氏:うちの会社でいうと、老若男女のメンバーがいて海外人材も多様にいて、多様性あふれるチームの中で働けるのはいいことだと思いますね。基本的に自由な空間で、海外人材に対してもウェルカムな環境です。
Q:キャリア面談や交換の場も設けていますよね?
阿波野氏:はい、キャリア支援とキャリア面談も第三者にお願いをして定期的に実施しています。上司に言いづらい部分はその第三者に相談可能な環境を用意していますので、一緒に働く仲間を増やしていきたいです。
地域の人事部や行政に対する期待と要望
Q:能代や地域の人事部、行政含めて期待をしていることを教えてください。
阿波野氏:災害や大雨でうちの海外人材も避難所に避難した時に感じたことですが、海外人材に対するフォローをもう少し手厚くする必要があると感じました。
受け入れる数が圧倒的に足りないからかもしれないですが、高齢者など弱い人へのフォローはあったとしても、海外人材に対してのフォローがないと感じます。
あとはコミュニティが圧倒的に足りないと思います。特に食文化、宗教文化の部分で情報が全く足りないので。そこは地域で一体となり、海外人材を受け入れる知識をみにつけ、理解を深めてほしいと思います。
Q:インタビューのご協力ありがとうございました。